ただいま冷徹上司を調・教・中!

始まりは意地と恥



平嶋課長にくだらない言い争いを聞かれてしまった翌日。

何か言われてしまうのではないかと内心ドキドキしていたが、課長はいつもと全く変わらずに淡々と伝達だけして外に出て行った。

安心したような、それでいて拍子抜けしたような、複雑な心境だった。

和宏からは昨夜、スマホに怒涛の言い訳と謝罪文が何通も送られてきたが、完全に無視を決め込んだ。

朝顔を合わせた時も情けない顔を曝していたが、もう何の感情も湧いてこなかった。

冷静に考えてみれば、大恋愛の末に付き合い始めたラブラブカップルというにはほど遠い二人だったのだから、裏切られても怒りが持続するはずもない。

梨央に関しては、昨日のことなんてなかったかのように笑顔で挨拶してきたもんだから、なんだか昨日のことが夢なんじゃないかと思うほどだ。

しかし和宏のことは忘れても、侮辱されたことは忘れない。

なにがなんでもあの女をギャフンと言わせてやらねば気が済まない。

なんとかして平嶋凱莉を攻略しなければ。

とりあえずは明日の歓迎会が一番近いチャンスとなるだろう。

苦手意識を克服するのに二日という日数じゃ足りないけれど。

まずは平嶋課長からの電話には、ワントーン高い声で対応することにした。

『今日は何だか気持ち悪いな』

という課長の一言に本気でカチンと来たことは内緒にしておこうと思った……。
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