「ねぇ、また特集組ませる気ない?」


撮影を終えて控室で着替えていたとき、目をランランとさせた事務所の社長がノックもせずに入ってきた。

基本的にこの人に恥じらいというモノはない。

モデルが着替えていようが脱いでいようが関係なく、思い立ったらトイレにまで押し掛けてくるような人だ。まったく俺が全裸だったらどうするつもりだったのか。

代わりに俺の隣ではガタガタッと物が崩れ落ちるような音。あぁほら。あんたがお構いなしに入ってくるから、新人のモデル君ってばめちゃくちゃ焦ってんじゃん。


「なんスか、それ」


ロッカーから鞄とストールを手にした俺は、カットソーの襟元に引っかけてあったサングラスを耳にかけた。すると褐色に染まる世界で社長の口角がニヤリと上がる。


「見出しはこうよ!【新婚!全部見せます!佐倉夫妻の甘々デート!】【七森美里…改め、佐倉美里!あのカリスマモデルを射止めた本気のコーデ!】どうよ!?」

「27点。ハイテンションすぎて引く」

「えー」

「あと、特集とか勘弁なんで」


ぶう、と眉を下げて唇を尖らせる社長。

あんた一体いくつだよ。

普段は"やり手の女社長"とか言われて業界から恐れられているくせに、自分の思い通りにならないと子供っぽく拗ねるところとかほんとガキかって思う。当然のことながら身内にしか見せない一面ではあるが、キャリアウーマンとしての堅さを象徴するかのようなパンツスーツとのギャップには地味に戸惑うばかりだ。


「だいたい、組むとしたら『Dream』のほうですよね?『Spade』じゃコンセプトが違いすぎるし、向こうと話しついてんですか?」