今夜、お別れします。


いつだったか、資料室で疲れて寝ていた桐谷を見つけた時、彼のそばに栄養ドリンクとキャンディをそっと置いておいたことがあった。


勿論その時は、私だと気づかれたわけではなかった。


誰が置いたか分からない、考えてみれば口にするものだから余計に不安に思ったかもしれない余計な好意を、彼は純粋に喜んでくれたようだった。


部署は違っても、同じフロアにいれば、桐谷がどれほど多忙で大変だったかは見ていれば分かった。


自分にできる事があれば助けてあげたいと思ったとしても、それを声にあげることはできなかった。


だから、遥に頼んでコッソリと彼の仕事に必要な資料作りや、雑用なんかを回してもらっては自分の仕事の合間にこなしていった。


「萌奈がしたって言ってもいい?」


何度か遥にそう聞かれたけれど、断固拒否して、他の誰かの名前を適当にあげてもらっていた。


忙しい中、小さな雑務を誰がしたかなんて彼が気にするわけはないと思っていたから。


大事な契約が取れたと部内で喜ぶ彼や彼の同僚や上司の姿を見て、自分のことのように嬉しくて。


それだけで満足だった。

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