シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

★ 2

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★★★


妊娠の事実を知って、出産までは実家に頼ろうと帰省した。産みたいと告げると、父は開口一番、ふざけるな!と声を張り上げた。


『どこの馬の骨ともわからない男と節操ないことをして、はしたない!』
『事情があって相手の素性は明かせないけど、ちゃんとしたひとなの。だから』
『なにがちゃんとした、だ! お前は愛人か娼婦か?』


私が四大を出てお菓子屋さんに勤めてることも拍車をかけた。厳格な父には遊んでる風にしか見えなかったのだ。


『東京に出したのが間違いだった。いますぐ堕ろすんだ。こっちに戻って見合いをしろ。父さんがいい男を紹介する』
『堕ろしません。見合いもしません。私はこの子を』
『はあ? この子だと? そんな汚い赤ん坊を産みたいのかっ。なら勘当だっ、出ていけ!』


玄関先でオロオロする母、心配そうな弟たちの顔は未だに覚えている。悲しくてどうしていいかわからなくて、帰りの新幹線の中で泣いた。好きになったひとがたまたま年下だっただけ。たまたま身分違いのひとだっただけなのに。

ひとしきり泣いて、私は決意した。この子を幸せにするために、もう泣かない、って。

アパートにもどって私は荷造りをした。
出てきたのはあのドレス。

悠季くんにプレゼントしてもらったあのラベンダー色のドレスと白い靴。

華やかな会場で悠季くんと踊ったことが鮮明に蘇る。まるで王子様のような悠季くんとお姫様になれた私を。

悠季くん……。

これさえあれば、私はいつでも悠季くんを思い出すことができる。



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