【短編】本日、総支配人に所有されました。
所有者に決定権があり、お断り出来ません。
三ヶ月間の研修中、自らの公休の度に様子を確認しに来てくれた支配人。


知らない人ばかりの中、励みにもなり、顔を見たら安心してホッと胸を撫で下ろす事が出来た。


辛い事も楽しい事も多々あり、覚える事も沢山あって、バトラーの研修以外にも基礎から学べた三ヶ月間だった。


目まぐるしく過ぎた研修の日々、本日、最終日となりました。


「短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました」


「お疲れ様ね、篠宮さん」
「戻らないで本店に居てもいいのよ?」
「そうだよ、戻らないで一緒に働こうよ」


支配人が車でお迎えに来てくれて、お別れの時にはお見送りの為に手隙の皆で駐車場まで出向いて、優しい言葉をかけてくれた。


本店の方々は皆、気さくな良い方ばかりで人間関係に悩ませられる事はなく、間借りした同部屋の女性とは電話番号を交換して後日、会う約束をしている。


「お忙しい中、ありがとうございます」


支配人の車に乗り込むとお礼を伝えて、シートベルトを締める。


久しぶりの車内のふんわりとした香りに癒される。


支配人にしては可愛すぎる香りだが、やっぱり好きだな。


「別に…。俺が橋渡ししたんだから、挨拶がてら来ただけだ。しかし、本店の方がお前の顔が
生き生きしてたな」


「皆さんに良くして頂いて、毎日が楽しくてやりがいがありました。そう言えば、常連の鈴木様にお会いしました。御夫婦は名前を覚えていて下さり、嬉しかった。本当に素敵な御夫婦ですよね!今度はウチのホテルに会いに来て下さるそうです。それから、間借りした同室の女の子と仲良くなって…」
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