20階建てのビルはガラス張りで、空の色が映って青く見える。

晴れの日に見るこの建物はとてもきれいで、底辺を這う朝のテンションを少しだけ引っ張り上げてくれる。


ここは大手製薬会社。
『大河(たいが)製薬』

子供向けのおやつや栄養食品も出しているから、私でも小さいころから名前を知っている有名企業だ。

私は薬剤師でも研究員でもないし、MRでもない。総合職ではなく一般事務職での採用。

それでも、この会社に入れたことは唯一母親が褒めてくれたこと。

ここの社員であることは、劣等感で埋め尽くされた私の、たったひとつのプライドなのだ。


カードをセンサーに当ててピッと音が鳴り、ゲートのバーが開く。

エレベーターの行列を尻目に、階段で、まずは3階のロッカールームへ向かう。

面白味のない白いシャツにチェックのベスト、紺のスカート。

せっかく洗練された建物なんだから、制服にも気を遣ってほしいと思うけど、外回りであるMRさんたちは男性も女性も自前のスーツだ。

中で働く人の制服を気にかけているほど、上の人間も暇じゃないんだろう。



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