副社長の一目惚れフィアンセ
「これから指輪を見に行こうか」

「えっ?」

「婚約指輪」

…そうだ。婚約するからには婚約指輪だ。

車が向かったのは銀座。

ブランド店が立ち並ぶ通りで「どの店が好み?」と聞かれたけど、好みも何もない。

高級ブランドに興味を持ったことは一度もないし、足を踏み入れたことすらないお店ばかりだ。

「お任せします」とひきつりながら副社長に微笑みかけ、あるブランド店に入った。


ガラスケースにはたくさんのジュエリーが並んでいる。

だけど、一十百千万……桁が…私の思っているよりも2,3桁多く、心臓が縮み上がる。

「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか」

黒いワンピースを着た中年の女性店員が出てきて、私たちに声をかけた。

「婚約指輪を探してるんです」

「それでしたらこちらに新作が数点ございます。
気になるものがあればお出ししますので…」



< 38 / 204 >

この作品をシェア

pagetop