副社長の一目惚れフィアンセ
今まで宝石には全く興味がなかったし、こんなに高いものにお目にかかる機会もなかった。

試着すると、白いライトに照らされて確かにキラキラと美しく輝く。

だけど多分、雑貨屋さんで売られている安い指輪との区別が私にはつかないと思う。

私には不相応だと思うものばかりが並んでいる中で、あるリングに目がとまった。

「…あ…これ…」

ねじれた造りのリングに、決して大きくはないダイヤ。

シンプルで普段使いできそうだ。

「じゃあこれを。サイズ合わせてください」

「えっ」

「はい、かしこまりました」

ただ独り言で呟いただけなのに、あっさりとリングは決まってしまった。

副社長は値段も見ておらず、焦った私は思わず値札の桁を数えた。

眩暈がする。ダイヤは小さめだけど、値段は他のリングと大差ない。

こんなものを即決…?

「ふ、副社長っこれすごく高いですっ」

小声でそう言ったけど、彼は動じる様子もない。

「そんなことは気にしなくていい。明里をもらうには安すぎるくらいだ」

不意打ちの明里呼ばわりに胸が跳ね上がる。

ドキドキしてしまって何も言えなくなった私は、されるがままサイズ合わせをされた。



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