「へえ。それであの時女性社員が呼び出されたんだ。何事かと思ったよ」

「ね。しかもさあ、私は明里から事情を聞いてたから、てっきり怒られて会社やめさせられるのかと思ってさあ」

あったかいうちに食べたほうがおいしいのに、香澄と美希は婚約の話題で持ちきりだ。

当の本人はこんなにもAランチ定食をおいしくいただいているというのに。

社食にはいろんな部署の人が出入りしていて、総務部内よりもたくさんの遠巻きの視線を感じる。

「ほら、あの子」

なんて声も時々聞こえて、広報には名前が載っただけなのに、顔まですぐにリサーチできる女子のネットワークはすごいなあ、なんて感心した。

きっと陰口を叩かれたりでもしているんだろう。


なんだ、普通の子じゃん。

なんであの子が副社長と婚約?

なんか裏があるんじゃないの?


聞こえているわけじゃない。あくまで私の想像。

逆の立場だったら、私もそんな噂話に加わって毒を吐いていたかもしれないと思うからだ。

だけど、それをいちいち気にしていたら、私はここで仕事を続けていくことができない。

「ねえ、香澄も美希も、食べないと冷めるよ?」

「なんでそんなに冷静なのよっ」

「だって…難関だった社長への挨拶も済んだし」

「えっ社長に会ったの!?」

興奮冷めやらぬ2人はますますご飯どころじゃなさそうだ。

まさか社長への挨拶が、酔っ払い相手のザックリしたシチュエーションだったとは誰も思うまい。



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