副社長の一目惚れフィアンセ
6.名前を呼んで
パーティーから2週間が経っていた。

ナオの休日出勤がない日曜日、ゆっくり眠っていられるはずだったのに、私はいつものアラームが鳴る時間帯に目が覚めてしまった。

習慣というものだろうか。平日は同じ時間に起きても眠くて仕方ないというのに。

もったないなあと思いつつ、隣では半口を開けて熟睡しているナオがいて、幸せな気持ちになる。

副社長として日々立派に仕事をこなしているこの人の、こんな無防備な顔を見られるのは私だけ。

彼の腕をすり抜けて起き上がろうとしたら、それに反応して彼の腕が強くなった。

「…もうちょっとここにいて…」

寝言のような小さな呟き。とろんとしてるのにどこか色っぽいその声に、胸がドクンと反応する。

そのあとはまたすぐ寝息が聞こえだした。

早く起きて朝ご飯の支度をしておこうと思ったけど、後回しにしよう。

彼が望んでいるのは、朝ご飯じゃなくて、今ここにある私の温もり。

必要とされるということはとても嬉しいもので、それを実感できるこんな何気ない時間がとても幸せだと思う。



< 97 / 204 >

この作品をシェア

pagetop