ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
派遣のシンデレラ
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十月も半ばに入り、もっくんのネジ工場に行った日からひと月が過ぎていた。
腕時計で時間を確認すると、十時四十分。
台車にコピー用紙や文具の箱を積み上げて、私は今、各部署に備品を補充して回っているところだ。
これは月に一度の庶務の仕事で、デスクワークよりは性に合うから好きな業務であったはずなのに……なんだろう、このやりづらさは。
五階の事業部のフロアで、コピー機の横の棚に各サイズのコピー用紙を詰め込んでいたら、私の周囲に十五人ほどが群がった。
事業部に来る前に、ふたつの部署を回ってきたのだが、そこでも大体似たような状況に見舞われていた。
「浜野さん」とあちこちから笑顔で呼びかけられて、手を動かしつつ「はい、こんにちは」と答えるのに忙しい。
最近の私は人気者で、トイレに行こうと廊下を歩いている時も、社食で日替わり定食を食べている時も、『浜野さんだ!』と皆が喜び勇んで寄ってくる。
私が社長の恋人で、同棲中だという噂はあっという間に広まって、最早社内で知らない人はいないのではなかろうか。
そのせいで注目度が急上昇し、芸能人でもないのに人が集まってくるのだ。