その人の顔は表情筋が死んでいるのか、常に無表情だ。

「久保。
どうして今頃この伝票を出してきた?
締め切りは昨日のはずだろ」

自分の席の前に立たせ、ばさっと伝票を投げ捨てるように私の前に置くと、その銀縁眼鏡と同じくらい冷たい視線をその人――君嶋(きみじま)課長は私に突き刺してきた。

「それは、その……」

それは今朝になって私が補佐につく営業の石川さんから、処理しとけって渡されたものだった。

「……わかりません」

曖昧に笑って誤魔化すと、じろりと眼鏡の奥から睨まれて背筋が一瞬で凍り付く。

しかし睨まれてもわからないものはわからないのだ。
私は石川さんに押しつけられただけで。

「わからないはずがないだろ」

コツコツと音を立て、君嶋課長の長い人差し指が伝票を苛々と叩く。
その音に私の心臓は不整脈を起こしそうだった。