突然現れた御曹司は婚約者

「ツラい話をさせてごめんね」


いつもより低いトーンで謝る寧々に首を振る。


「ううん。ツラくはないよ」


祖父母にたっぷり愛情掛けて育ててもらった私は両親がいないことを寂しく思ってもツライと感じたことはない。


「だから、むしろ聞いてくれてありがとう、だね。もう自分の中では消化出来そうになかったから。話せて少しスッキリした」
「それなら良かったけど、たしかにそうよね。突然婚約者です、なんて現れたら普通、混乱するわ。でもお祖父さん、お祖母さんからはなにも聞いてなかったの?」


祖父母は私が事故のことを思い出すことと、両親を恋しく思うことの両方を懸念して、ふたりのこと、そして3歳までのことをあまり教えてはくれなかった。

もっとも産まれた地は別の離れた場所だったから、この地に住んでいた祖父母とは年始の挨拶程度にしか顔を合わせていなかった。

だから当然、引き取る前までのことは知らなくて、教えたくても教えようがなかったと言う方が正しい。


「でも東堂の息子の話だと栞は3歳までの間に彼と出会い、親公認の元、結婚の約束をしたってことよね?」
「そうみたいだね」


記憶にも記録にも残っていないから確かめようがないけど、要は寧々の言った通りなのだ。

ただ私は、たとえ彼の言っていることが本当で、両親が認めていたとしても、個人情報を調べ上げてくるような人とは関わりたくない。


「それならあれに参加してみない?」

< 13 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop