『必ず好きだと言わせてみせる』


別れ際の蓮の言葉が頭から離れない。

あの真剣な眼差しも。

ふとした瞬間に思い出してしまい、胸が熱くなる。


「イケメンだもんな。あんなイケメンに連れて行かれたら男の俺でもドキドキしちゃうよ」


胸を押さえ、うっとりした表情でそう言ったのは喫茶店のマスター。

昨日、途中で退席してしまったことを謝ろうと思って寧々を誘ってランチの時間にやって来たのだ。


「本当にすみませんでした」
「気にしなくて全然大丈夫だよ。それよりあのあとどうしたの?もしかしてそのままお持ち帰りされちゃった?」


興味津々なマスターに慌てて手を振って否定する。


「あのあとはひとりで帰りました」


寧々に連絡しようかとも考えたけど、もし街コンで上手くいっていたら悪いと思って連絡しなかった。


「そんなこと気にする必要なかったのに」
「寧々ちゃんはモテてたけど、寧々ちゃんが気に入ったひとはいなかったからね」


マスターの合いの手に寧々は頷き、また私の方を向いた。


「ていうかあのイケメンなに考えてるの?ひとりで帰らすなんて信じられない。私、『栞のことお願いします』って言ったよね?」
「うん。言ってた。だから東堂さんはね、自宅まで送るって言ってくれたんだよ。でも…」


恋愛の経験値がなさ過ぎてて完全にキャパオーバー。

好意を無にして逃げるように走って帰った。

持ち帰ったものと言えば蓮の汚れたカーディガンくらいなものだ。


「え?あれ、持って帰ったの?」
「だってあんなに高価なカーディガンを『忌々しいから捨てる』とか言うんだもん」


お金持ちの発想なのかなんなのか知らないけど、きちんと綺麗にすればまだまだ全然着られるものなのに、帰り際ゴミ箱に捨てようとしていた。

もったいなくて、『捨てるくらいなら私にください』って半ば奪うようにして持ち帰ったのだ。