能ある狼は牙を隠す

傍目八目



「狼谷の噂? あー、喧嘩相手を殴り倒して病院送りにしたってやつ?」

「えーっ、そうなの!?」


朝のホームルーム前。
委員会は大丈夫だったかと心配してくれたカナちゃんとあかりちゃんに、私は気になることを聞いてみた。

狼谷くんの噂について。以前小耳に挟んだことがあるけれど、二人に確認しておこうと思った。

まさかの新しい情報に、私は純粋に驚く。


「いやいや、まあそれも聞いた事はあるけど。女の子をとっかえひっかえしてるって方が有名じゃない?」


カナちゃんが眉尻を下げてそう訂正した。
そうそうそっち、と相槌を打って、私は軌道修正する。


「昨日、帰り際に女の子が狼谷くんの腕組んで、すごーく仲良さそうにしてたんだよね。でも、彼女じゃないって」

「見るたび違う子連れてるよねー。女の子たちもよく飽きずに寄ってくわ……」


なるほど、狼谷くんはとんでもないプレイボーイというわけだ。加えて野蛮なところもある、と。

――うん。


「やっぱり苦手だぁ……」

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