初恋の物語

(明石創太)

「あっはははは!」
教室に頭の悪そうな笑い方が響き渡る。

「まじか、腹いてー」
笑っているのは俺の幼馴染の佐藤 翼、今朝俺が電車の中で公開告白をしてあっさり振られた話をしてから五分はこの調子だ。

「創太、お前絶対バカだろ。電車で告白なんてするかよ?」
未だにおさまりきらない笑いを堪えるように翼は言った。

「うるさいな、しょうがないだろ。思いついちまったんだから」

「思いついてもそんなことしねーよ」
翼に言い返され、改めて自分のしたことを思い出すと、今すぐ家に帰って布団に埋もれたくなった。

「高校入って二年間、ただ好きな人を見てるだけだった幼馴染がようやく勇気振り絞って話かけたってゆうのに笑うことないだろ」
翼があまりにも笑うのでだんだん腹がたってきて、思わず強い口調でそう言った。

「ただ話かけるならわかるけど、いきなり告白は誰だって怖いぞ。通報されなかっただけでもラッキーだ」

「でもさ……」なにか言い返そうかと思ったが女の子関係で翼の言っていることは正しい。

翼はよく女の子にモテた。あと顔も割とかっこいい。

「だいたいその子、隣の白凛女子高校だろ?」

「そうだけど」

「お嬢様学校じゃないか。俺らみたいな平凡な公立高校が相手にされるわけないだろ」

この男に優しさはないのか? 内心そんなことを思いながらも翼の言っていることはやっぱり正しかった。
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