アンニュイな彼
6



急な雷雨や激しい豪雨にご注意ください__テレビから天気予報が聞こえる。

午後になり、急に雨足が強まった。
気温が下がってせっかく綺麗に色づいた紅葉も今日で散ってしまうかも。

実家の部屋の窓から、私は風で弓なりに曲がる細っこい木の枝を眺めながら思った。


「……はぁ……」


今日は第三月曜日。
文化祭から二日が経った。

真菜から勝手に帰ったことを咎めるメールがきて、私はごめんと返信した。
日曜日にもう一度行って、大学のライブとかゆっくり楽しもうよと誘われたけど、さすがに断った。

あんな騒動があってから大学に顔を出す勇気はないし、二日も仕事を休めない。


『愛は黙って俺について来いよ。脇見なんてしないで』


あれから二日。
昨日は普通に勤務したけど、気まずさは拭えなかった。智兄は今まで通り、なんら変わり無く私に接してくる。

ってことは、あの亭主関白まっしぐらなプロポーズめいた言葉は、なかったことになってる?
私が〝ごめん〟って答えたのも。

智兄の中で、都合が悪いことは綺麗サッパリ消去されてるのでは……?


「もう一回、ちゃんと話さなきゃな……」


智兄は、私にとってどう転んでも恋愛対象にはならない。家族の一員だから。
例え、今傷心の身であっても、気持ちが揺らぐことはあり得ない。

昔から気にかけてもらって、雇ってもらって感謝はしてるけど……。
そう伝えなくちゃ、このままあやふやにしておくのはいくら親しき仲といえども失礼だよね。
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