それでもやっぱり、君が好き【8/26番外編追加】

✱差し伸べてくれる手

「何やってるの?」



一瞬通り過ぎようとしたはずの革靴があたしの方に向いている。



「わからない」



自分でもこんなところで何をしてるのかが本当に分からなかった。

通りすがりの人に向かって、何を言ってんだろう。
知らない人だからなのかもしれない。
こんな意味もないことが言えるのは。




「君、ずっとそこにいるでしょ?」


「いいでしょ。別にあなたには関係ないじゃない!」



はじめて顔を上げる。



「お、こっち見た」



あたしの言葉なんかお構い無しで、あたしと同じようにしゃがみこむ。

背が高くて、茶髪で。
仕事の後なのだろう、作業着を着ている。



「構わないでください」



見上げた顔を再度下へと向ける。



「こんなとこにずっと座ってたら風邪引くよ?」



拒絶したはずなのに、彼は怯まずにあたしの顔をのぞきこんでくる。



「風邪引いたっていいよ」


「自暴自棄になっちゃって」



ふぅっとため息をついて、困ったように眉を下げる。

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