次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
第二章、王子と運命の乙女


腕を組んだ格好で窓際に立ち、昨晩の嵐が嘘のように晴れ渡った空をじっと見つめているオルキスの元へとアレフが静かに歩み寄り、「オルキス様」と頭を下げた。


「出発の準備が整ったようです」

「……あぁ。分かった」


窓の下に広がる庭には家主であるアレグロがいる。アレグロは先ほどまでこの部屋にいて、リリアがどれほど良い子かを饒舌に語り尽くしていったばかりだ。


「本当に彼女を連れて行かれるつもりなのですよね?」


神妙に話しかけられ、オルキスは綺麗に剪定されている庭の低木から、部屋の中へと視線を移動する。


「あぁ。そのつもりだ」


迷いない返答に対して、アレフは興奮を隠し切れず徐々に瞳を輝かせていく。


「では……彼女が運命の乙女ということで間違いないのですね!」


その表情に少しだけ目を大きくさせたのち、オルキスは素知らぬ顔で肩を竦めた。


「それはどうだろう……まだ分からない」

「分からない!? 第一王子がボンダナの予言通りの娘を連れて帰ったとなれば国中が大騒ぎになり、彼女も運命の乙女としての扱いを受けることになる。気軽に連れて帰るべきでないことは、お分かりになりますよね?」



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