#初恋_ハツコイ_
第2章 あいつ。

疑問

謎は解けないまま、もやもやした気持ちで1週間を過ごした頃。


「ねー。聞いた?永山、鈴に告られたって」

それまで上の空だった私が、少し目線を上げた。

鈴…。そうなっちゃんが呼ぶその子のフルネームは、西原 鈴鹿(ニシハラ スズカ)。
顔、スタイル、性格、全てが良くて、小学校の頃から男子からの多大な人気を得ていた女の子だ。

『…ふーん…お…お似合いなんじゃない?』


「そう?私はあんたと永山のペアが好きだけどなあ」

なっちゃんはふふふと笑って少し遠くの席にいる永山を見た。

『なっ…何言ってんの!?』

「だって羨ましいよ、あんなに仲良くてさー」

『…別に、嬉しくないよ』

なっちゃんは怪しむ目で私の目を覗き込んでから、話を続けた。

「まあ永山は告白断るだろうから安心しな」

『え、そうなの??…って別に心配してないし』
大きな声が出てしまって、周りの人達が私の方を少し見た。
なっちゃんは人差し指を唇の前に当てて苦笑いする。

「…だって私、永山の好きな人知ってるもん」

『え、それってだれ…んぐっ…』

注意されたにもかかわらずまた大声を出しかけた私の口が、後ろから誰かに塞がれた。

「何話してるのかなあ?」


声の主は…永山。

そう気づいた途端、ぼっと顔が熱くなる感じがした。

「ご、ごめん、ばらすつもりはないってば」

「ならべらべらと喋んなよ…んでお前も変なことに首突っ込むな」

塞がれていた手がほっぺに移動し、強くつねられる。

『いだっっ…別にそんな怒んなくてもいいじゃないの』

「怒ってないし」

「女の子の扱いには気をつけろー、ゆーき」

そう言って永山の隣に来たのは
クラスのムードメーカー、西村 慶太(ニシムラ ケイタ)だった。

いつの間にか2人は仲良くなっていたらしく、「慶太はいちいちうるせえ」と永山は彼を睨んだ。

「あ…こと、悪いけど今日一緒に帰れない、掃除当番で」

突然なっちゃんが思いついたように言う。

なっちゃんは、永山の方をちらりと見た。

『あ、うん、わかった』

「女の子を1人で帰らせんの?」
西村君はつんつんと人差し指で永山をつつく。

「ったくめんどいな!!いいよ、一緒に帰るよ!」

「良かったあ!こと、悪いけど今日は永山と帰ってね!」

『え、、え!?』


いつの間に一緒に帰ることになってんの!?

目を見開く私を見ながら、西村君となっちゃんはにこにこしていた。
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