愛は、つらぬく主義につき。
2-1
「お疲れさまでーす。お先に失礼しまぁす!」

「ハーイ、お疲れさーん!」

 ちょっとメタボだけど人は好い宮沢部長が、退社時間になって事務所を出てくあたしに、軽快な挨拶を返してくれた。

 建物の裏手にある社員用の駐車場に小走りで向かい、黒のスティングレーに乗り込む。あたしの愛車。
 泥ハネが目立つから黒じゃない方が良かったんだけど、遊佐がね。・・・ほんと。惚れちゃった弱みなの。
 
 今日は一旦マンションに戻って。着替えてから実家に。これから、おじいちゃんの古希のお祝い会が待ってる。
 お正月もそうなんだけど正装ったらもう、真っ黒な集団だからねぇ。紛れるなら同じ色。あたしも黒で行くつもり。
 オフネックで、袖は小花模様のレース仕立て。胸元からAラインになってる膝丈のシフォンドレス。これにストラップ付きの5センチヒールとクラッチバッグを合わせれば、お嬢さんぽいの・・・の出来上がり。
 髪はネジネジして簡単アップ。ネックレスとイヤリングは、成人式のお祝いにおばあちゃんがくれたあの真珠をして行こう。

 頭の中で組み立てながら、どことなく気の重さも感じつつ。夕闇の中、車を走らせるのだった。
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