愛は、つらぬく主義につき。
2-2
 哲っちゃんが言ってた通り、粛々とした堅苦しいもんじゃなく。当人の挨拶と、代表して哲っちゃんが祝辞と乾杯の音頭を取り、和やかな雰囲気で宴が始まった。

「・・・宮子、ほら行くぞ」

 仁兄に促されておじいちゃんの許へ向かう。

 挨拶の時は遠慮して、会場の真ん中くらいで仁兄の隣りに立ってた。前の方だと、どうしたって子供の頃からの顔見知りが多くて。どうせすぐ結婚の話になるに決まってるし。

 ここからは気合い入れて、最後まで笑顔で躱しきらないと。よし!

「お、宮子お嬢!」

「あ、こんばんはぁ。今日はおじいちゃんの為に、ありがとうございますぅ」

 目ざとくあたしを見つけて声を掛けてくるのは、古参も中堅も関係ない。会長のお気に入り、且つ組長の箱入り娘に取り入ろうって算段が見え見え。 

「お嬢も隅に置けねぇなぁ。木崎と同伴かい」

 隣りをチラ見して、ニヤニヤと下卑た笑いが覗いてた。
 ・・・ここが会社だったら即、セクハラで訴えるぞ、ジジイ。心の中で毒づき、にっこり愛想笑いを浮かべる。

「仁兄も捨てがたいんですけどねぇ。あたし、惚れた男一筋なんでぇ」
 
「遊佐の坊ンかい? いやね、お嬢に紹介したいイイ男がいるんだよ」

「あたしの初恋、哲っちゃんなんで。アレよりいい男じゃないと見向きもしませんよ?」

 シニカルに口角だけを上げてみせると。

「若頭を引き合いに出されちゃなぁ」

 誤魔化し笑いでやっと引き下がった。

 毎回、飽きもせずこういう話を振ってくる、あざといタヌキ達も多い。だからこういう場じゃ、いつも遊佐を離さない。あたしが惚れてる男だって見せつける為に。
    
「・・・相変わらずモテまくりだな、お前」

 仁兄がククッと人の悪そうな笑いをくぐもらせた。

「親父と俺を虫除けにするなんざ、いい度胸だ。どうせなら結婚してやるぞ? 宮子なら俺はいい」

「・・・えッ?!」

 冗談とも本気ともつかなかった仁兄の背中を、慌てて追う。
 
 今の。やっぱり冗談だよね? だって仁兄は知ってるもん、あたしがずっと遊佐しか見てないコト。
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