毒舌社長は甘い秘密を隠す
再び、恋をしました

「おはようございます」
「あぁ」

 翌日、出社してきた井浦社長を社長室で出迎え、挨拶をした。
 いつもと変わらぬ明るさの私に、彼も愛想のない反応を返す。


「社長、お加減はいかがですか?」
「いつもと変わらない」
「それはよかったです」

 壁に作り付けたクローゼットにトレンチコートとジャケットをしまう、彼の背中に話しかけた。


「沢村さん」
「はい」

 社長は風格のあるデスクチェアに腰かけ、改めて私に話しかけた。


「昨日は、助かった」
「お役に立ててよかったです。野菜粥もお召し上がりになられましたか?」
「……あぁ」

 彼は無表情で、短い返事をくれた。
 だけど、それでも嬉しい。社長の役に立つ存在でいることが、秘書としての役目なのだから。

< 45 / 349 >

この作品をシェア

pagetop