愛されざかり~イジワル御曹司の目覚める独占欲~


三人で来たのは、近所のランチもやっているカフェ。
雰囲気的に、カフェというよりは喫茶店と呼んだほうがしっくり来るような少し古いレトロな佇まいだ。
こんな素敵なカフェがあるなんて知らなかったから、少し嬉しい。

奥の座席に通されて、それぞれメニューを頼むと心さんが口を開いた。


「改めて、初めまして。俺は藤堂心(しん)。歳は真紀より2つ下の32歳。藤堂クリニックの奥に入っている藤堂薬局の薬剤師をしています。君は?」
「あ、えっと、朝比奈里桜です。28歳。下着メーカーで働いています」
「下着メーカー!」


心さんの顔が一瞬輝く。大抵の男性はみんな同じ反応をするからこの表情にもだいぶ慣れたものだ。
別にイヤらしいとか不快感は感じない。
女性にも男性にも喜ばれるような物を作ろうと心掛けている部分があるからだろう。
むしろ、今後の企画のためにも、男性目線の意見を聞きたいくらいだ。


「あの、心さんは先生とご兄弟とかなんですか?」
「いや、ただの従兄弟」


二人の苗字が同じなので、首を傾げたが藤堂先生はコーヒーを飲みながらバッサリ切り捨てるような口調で言い放った。


「冷たいな、真紀は。子どもの頃から仲の良い兄弟みたいな従兄弟だよ。それより、里桜ちゃんは真紀とはどんな関係なの?」


薄々気が付いていたけれど、心さんは人懐っこい性格のようだ。見た目の通り犬っぽい。
さっそく、里桜ちゃんと呼ばれるが初対面なのに不快な気分にさせないのは、この性格も大きいようだ。


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