それでも僕は君を離さないⅢ
δ. 苦難の秘書と天然満開のイケメン
堅実を絵に描いたような人物立花樹里は

今日も社長が気持ち良く仕事ができるよう社長室を整え

役員の入室が多い手前にある自分の控え室を整え

いつもながら万全の準備をおこたらないよう

常に二重以上のチェックを限界のスピードで済ませた。

「本日のご予定ですが、ご要望通りランチミーティングは和食をご用意いたします。」

社長はデスクの向こうでチェアの背もたれに身を預け目を閉じていた。

樹里は社長が何がしかの返答ができるよう少し間を置いたが

社長は無言のままでうなずくでもなく

樹里はその微妙な空気を直感で拾った。

社長のそばにすっ飛んでいき顔のすぐ近くで息を止めた。

「社長?」

震える声で呼びかけたが返事がなかった。

デスクの上の内線電話を引っつかんで医務室を呼び出した。

その後社長室はバタバタと人の出入りで慌ただしくなり

救急用のストレッチャーの上で身動きしない社長の姿を食い入るように見つめながら

エレベーター前まで付き添った。

医務室の室長が救急車に乗り

その後を追いかけるような形で社有車にはドライバーの他に

業務部門、総務部門、秘書部門からの3人が乗り込んで病院に向かった。

樹里は自分の控え室で予備の内線を用意し待機した。

社長の容態について報告があった場合

すぐに各取締役へ伝えなければならない。

正確には各取締役の秘書たちへだ。

< 9 / 58 >

この作品をシェア

pagetop