赤薔薇の騎士公爵は、孤独なカヴァネスに愛を誓う
九章 約束のために
翌朝、和やかな朝日を瞼越しに感じて意識が急上昇する。頭を撫でられる感覚にまた眠ってしまいそうになったが、気を強く持って目を開ける。
「目が覚めたか、シェリー」
穏やかな表情を浮かべているスヴェンは、「おはよう」と言って寝ぼけているシェリーの頬に口づける。
それにぼんやりとしていたシェリーの頭ははっきりとしてきて、素肌を重ね合わせるように身を寄せ合っている状況に顔を真っ赤にした。
「お、おはようございます」
なんとか返事をしたシェリーは、シーツを掴むとそのまま頭まですっぽりと被る。
昨日はスヴェンに体の隅々まで見られ、触れられ、愛されて。彼と結ばれたときの記憶が蘇って急に恥ずかしくなり、シーツの中から出られなくなった。
そんなシェリーを目を丸くして眺めていたスヴェンは、限界とばかりにブッと噴き出す。
「なかなか可愛らしいことをしてくれるじゃないか、シェリー。昨晩すべて見せ合ったというのに、なにをいまさら恥じらうことがある」
楽しそうにシーツの上から頭を撫でてくるスヴェンは余裕そうで、自分だけが慌てているのだと思うと悔しくなった。
昨日はあんなに取り乱して求めてくれたというのに、今や見る影もない。
「恥ずかしいに決まっています。スヴェン様こそ、どうしてそんなに余裕でいられるのですか? 私は心臓が今にも止まってしまいそうですのに……」
「俺のせいで心臓が止まるのか、それは心配だな」
そんな彼の声が聞こえたと思ったらシーツが軽く持ち上げられ、シェリーは「へ?」と気の抜けた声を出してしまう。
呆気にとられている間に、なぜかスヴェンもシーツに潜ってきて目が合うと不敵に笑われた。