言い訳~blanc noir~
12年ぶりの再会

「―――目の前のカフェに今すぐ来てください。来なければ丸和銀行大阪支店を爆破します」


 椎名和樹が電話を代わると、女の声で、突然わけのわからない爆破予告を受けた。

 電話を取り次いだ者に“鈴木”とありふれた姓を名乗ったようだが確実に偽名だろう。

 こんな馬鹿げた電話に付き合うほど暇ではないが、1ヶ月前、不倫相手だった絵里子が出刃包丁持参で現れたばかりだった。

 さすがにそれには驚いた。

 仕事を終え、駐車場に向かっていると背後から名前を呼ばれた。振り返ると、暗闇の中に絵理子が立っていた。

 そう来たか。

 と思ったのは、銀色に光る出刃包丁に目が向いたからだった。それが偽物でない事くらい、素人目にも十分わかる。絵里子の殺気立った表情も単なる脅しではなさそうだ。

 因果応報。

 この四文字が頭に浮かんだ。


―――ここで俺は刺されて死ぬのか。
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