エリート上司の甘く危険な独占欲
 それから三十分ほどして、華奈が暮らす七階建てのマンションに到着した。

「お世話になりました。服は洗ってお返しします」

 華奈は颯真ではなく、ナビを見ながら言った。

「気を遣わないで、そのまま返してくれていいよ」
「いいえ、洗ってお返しします。いろいろとありがとうございました」

 華奈はシートベルトを外し、助手席のドアを開けた。外に出たとき、颯真が運転席から身を乗り出して、華奈にメモ用紙を渡した。

「それ、俺の携帯番号。俺が必要になったらいつでも連絡して」

 手の中の十一桁の番号を眺めながら、華奈は皮肉な気持ちになる。

(連絡したらまた慰めるために抱いてくれるってこと?)

 華奈は無言で一礼し、ドアを閉めた。そうして颯真の車を見送ることなく、マンションのエントランスに入った。 
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