駅まで歩く道のり、空を見上げ溜息をつく。
今日の天気予報は晴れ。目の前には間違いなく雲ひとつない青空が広がっているのに、私の気持ちはどんより曇り空。
上司の期待に応えよう!
昨日は気合満々でそう決めたのに、朝目が覚めたらすっかりテンションだだ下がり。秘書なんて私には無理と、怖気づいてしまった。
「足が重いんですけどぉ」
このままじゃ、アスファルトに足がズブズブ埋まっちゃうんじゃないの? そう思うくらい一歩踏み出すのも重たくて、また溜息をひとつ。
それでもなんとか駅にたどり着き電車に乗り込むと、空いてる席を見つけて座った。
予定より早い電車にしてよかった。そうじゃなかったら今頃私は満員電車に揺られ、人の波に押しつぶされていただろう。
それでも止まらない溜息をつきながら車内を見回すと、真新しいスーツを着た人たちが目に入る。
あなたは何課に配属ですか? え? 経理課。いいですねぇ、私と取りかえっこしませんか?
ひとり頭の中で小芝居を繰り広げていると、会社の最寄り駅に到着してしまった。
何やってるんだろう、私。