今回の総一朗さんの出張は、コンベンションや展示会に参加するため一週間と長い。

「心配だし実家に帰れ」と総一朗さんに言われたが、総一朗さんを感じるところに居たいとマンションで待つことにした。

定時を過ぎ仕事に切りがつくと、会社をあとにする。

「夕ご飯はどうするかなぁ」

会社を出て駅までの道すがら考えながら歩いていると、交差点を曲がったところで後ろから誰かに呼び止められるた。

「一条和花さんですね?」

その声に振り向くと、スーツを着た男性が立っている。その風貌から変質者のたぐいではなさそうだが、一癖ありそうな雰囲気に身構えた。

「そうですけど、あなた誰ですか?」

「申し遅れました。わたくし結城会長の個人秘書をしております、冴羽です」

結城会長の個人秘書──

名刺を目に前に出されると、震える手でそれを受け取る。

それが何を意味しているのか。総一朗さんにバカと言われ続ける私でも、さすがにわかるというもので。

いつかは会うことになるんだとは思っていたけど、まさかこのタイミングになるとは……予想外だった。