頬にキス事件から三日後。大泉室長に「掃除は今週で終わりです。来週からは、秘書課勤務となりますので、そのつもりで」と言われ、今私は秘書室でとてもいたたまれない気持ちで座っている。

「大泉室長。なんで一条さんが社長担当になるのか、私には理解できません」

佐伯さんがヒドい剣幕で、大泉室長に詰め寄っていた。

佐伯さんがは秘書室の女性リーダーで、勤務八年のベテラン秘書。今は専務付きの秘書を兼任しているが、実は社長付き秘書の座を虎視眈々と狙っている──と同期入社の男性が教えてくれた。

なのに今年入社したばかり、しかもペーペー同然、秘書ド素人の私が社長担当になったことが気に入らないんだろう。

さっきからずっと佐伯さんに睨まれていて、どうにもこうにも居心地が悪い。

一言言わせてもらえるならば、私だって社長担当なんてご遠慮したい。というか、大泉室長からそのことを聞かされた時「私には無理です」と丁寧にお断り。でも大泉室長は部屋に入る前に「私ひとりでは、どうにも手に負えなのでよろしくお願いします」と再度断る間もなく決まってしまった。

大泉室長でも手に負えないほどの仕事があるんだろうか? だったらやっぱり、私じゃなくて佐伯さんの方が適任だと思うけれど。