世間は、もうすぐゴールデンウィーク。友達は旅行の計画を立てて楽しみにしているというのに、私の気持ちはウキウキとかワクワクから遠ざかっていた。

「和花、引っ越しの準備は進んでるか?」

「何のことでしょう?」

「お前なあ、いつまで俺に逆らう気だよ!」

「逆らう? 滅相もございません。逆らっているのではなく、拒否しているんです」

社長のお世話係を仰せつかってからというもの、毎日この会話は続いている。

「俺の世話をするなら一緒に住んだほうが便利だろ」と言う結城社長と、「恋人でもないのに社長と一緒に住むなんてできません」という私の間で、同居するしない戦争勃発。

正直なことを言えば、毎日ではないといえ結城社長のマンションでの仕事を終え、疲れた身体で自分のアパートに帰るのは大変だ。けれど結婚前のうら若き乙女が、何が悲しくて社長と一緒に暮らさなきゃいけないのか。

「わたくし本日は、秘書室での仕事になりますので。失礼いたします」

「おい、逃げる気か。話はまだ終わってない!」

両耳を押さえ聞こえないとアピールすると、そのまま踵を返して社長室を出た。