社長はしばらく黙ったまま、何かを考えているような顔をして私を見つめる。その瞳に囚われてしまった私は、瞬きひとつできない。

それは一瞬のような、何分も続いたような──

息苦しさに何か話そうとして、その沈黙を先に破ったのは社長。

「やっぱりお前は、俺の手元に置いておく。すぐに俺のところに来い」

「え? それって、どういう意味……ですか?」

嫌な予感が過ぎる。

「一緒に暮らす」

やっぱり。

「それは嫌だと断って……」

「黙れ。お前に拒否権はない」

それはいつもの威圧的で脅迫めいた物言いではなく、頼むからそうしてくれと言わんばかりの何かを秘めた言い方に心が動かされてしまう。

触れられている頬が、このまま溶けてしまうんじゃないかと思うくらい熱い。

離してほしいのに、離してほしくない。矛盾したふたつの気持ちに、心が乱されてゆく。

「いいな。今週末に引っ越しだ」

もう何も言うつもりはなかった。

ただ黙って頷くと、社長は安心したように王子の笑顔を見せた。