行かなきゃ行かないで、悪魔の形相で怒るくせに。この、バカ総一朗!

心の中では何でも言えると得意げに総一朗さんを見上げると、左頬をキュッと抓られてしまう。

「そんな顔してると、お前の許可なく襲うぞ。いいのか?」

「どんな顔だって言うんですか! もし襲ったら、婦女暴行で訴えます」

「全く強情な女だな。さっさと俺に落ちろよ」

「永遠に落ちません!」

これまたいつものやり取りをしていると、寝室のドアの方からゴホンッと咳払いが聞こえた。

「お取り込み中申し訳ないが、今日は午前中からB社との会合がはいっているぞ、総一朗」

「ああ!」

そうだった。私もお世話係兼秘書として社長のスケジュールは把握しているはずなのに、総一朗さんに惑わされて忘れてしまっていた。

「そんなの洋匡でなんとかしろよ」

「できるか、そんなこと。今日の会合が重要ってことは、お前が一番良くわかってるだろ」

「当たり前だ、すぐ準備するよ。和花、スーツ出しとけ」

毎度のことながら、総一朗さんの変わり身は早い。パッと表情を仕事のものに変えると、さっさとバスルームへと行ってしまった。

「洋匡さん、すみませんでした。私、今日のことスッカリ忘れてしまっていて」

「いや、和花ちゃんは気にしなくていいよ。これは俺の仕事だからね。それに、和花ちゃんには、すごく感謝してるんだ」

「感謝? 洋匡さんが私にですか?」

はて? 私、洋匡さんに感謝されるようなことした覚えないんだけど。