「おはようございます」

いつものように挨拶をすると、秘書室の仲間が「おはよう」と明るく返事をしてくれる。

この光景も、変わったことのひとつ。

私が資料室に閉じ込められた後、私があそこにいることを社長に知らせたのは、同じ秘書課で私のひとつ上の先輩の新井千晴さんだったということを知る。

何度か私に話しかけようとしたところを佐伯さんに睨まれて、話すのをやめてしまったあの先輩だ。

今までは佐伯さんに目をつけられるのが怖くて彼女に従っていた新井さんだったけれど、資料室の件はどうしても我慢できなくて、佐伯さんからの仕返しを覚悟で知らせてくれたと洋匡さんから聞いた。

でもそれ以降秘書室の雰囲気も変わり、しばらくして佐伯さんは会社を辞めた。一身上の都合ということだったが、きっとそのことが影響しているんだろう。

気持ちよく自分の席に座ると隣の席の千晴さんが椅子のまま近くに寄ってきて、顔を寄せる。

「和花ちゃん、おはよう。今日はお昼一緒に行けそう?」

コソコソと話す千晴さんに頷いて目でオッケーを送ると、千晴さんは嬉しそうにニコッと笑顔を見せて戻っていった。