会社最寄りの駅周辺は、うちを含め大きなビルが立ち並んでいる。五月も半ばを過ぎ朝晩も温かくなってきたというのに、今日はビル風が強くてその冷たさに肩を竦めた。

しばらく実家に住まわせてほしい──

両親にお願いすると、理由も聞かず「好きにすればいい」と了承を得る。持つべきものは実家の両親と喜んだまでは良かったけれど、なんだかんだ干渉してくる父親に悩まされる毎日で住みにくいったらありゃしない。

それでも今は文句を言える立場でもなく、帰れるところがあるだけありがたいと思うようにした。

「さてと、今日も実家に帰りますか」

鞄を肩にかけ直し、駅に向かって歩き出す。交差点で横断歩道を渡ろうと足を一歩踏み出すと、その先の路地に見覚えのある車が見えて足を止めた。

「あのブルーのクーペって……」

まさかと思い辺りを見渡す。

あの車は間違いなく、総一朗さんの車。少し見にくいところに停めてはあるが、私にはわかる。そしてその理由はどう考えても、私絡みなのは間違いなさそうだ。

どこかに総一朗さんはいる。でも今は捕まるわけにはいかないと慌てて踵を返すと、ドンッと思いっきり誰かにぶつかってしまった。

「ごめんなさい。慌てていたので……」

深々と謝り顔をあげるとそこには総一朗さんがいて、ムッとした顔で立っていた。