「失礼いたします」

男性が個室から出ていくと、ふたりだけになった部屋は不穏な空気が充満する。

総一朗さんとは部屋に入るときに一瞬確認しただけで、まだ目を合わせていない。

「座れよ」

そう言われてもドアの前から一歩も動けない私は、深く頭を下げた。

「この度は多大なご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」

「誰が謝罪しろと言った。座れって言ってんの。和花はバカなのか?」

来た早々、辛辣な言葉を浴びせる総一朗さんって……。

やっぱり悪魔だ。

でもまだ私のことを“和花“と呼んでくれることに、ホッと安堵の溜息を漏らす。

久しぶりに聞く、総一朗さんの声。それだけで自分の気持ちがこんなにも昂ぶるなんて、思いもよらなかった。

その気持ちを悟られないように席に座ると、ゆっくり顔を上げた。

「馬子にも衣装、だな」

表情ひとつ変えないで、総一朗さんはいつものように私をからかう。

でもそれは想定内で、そこは敢えてスルー。すると総一朗さんは私の反応が面白くなかったのか、鼻をフンッと鳴らすとテーブルの上に肘をつく。