恋にはならないわたしたち
観賞用の男。


珍しく瑞穂が酔いつぶれて居酒屋のテーブルで突っ伏していた夜。



偶然耳にした銀行の同期の三池千尋の秘密。



186センチの身長に、小さな整った顔。入るだけで尊敬の目で見られる国立大学を首席で卒業。いつも仕立ての良さそうなスーツを身につけて、仕事も出来て。



なんだコイツ、欠点ないのか。
負けず嫌いの瑞穂が無理矢理見付けた欠点は少し無愛想にも見えるくらい口数が少ないこと。

それさえ周りの女の子には『クール』とプラスに取られ、瑞穂は口を尖らす。




167センチと女子にしては大きく、酒を浴びるほど飲んでも翌朝平気な顔して、ミントタブレットをガリガリ噛んで窓口で客の相手を笑顔でし、さっぱりした気性の瑞穂は同期の中でも男子扱い。



その日も男子ばかり5、6人の集まりに仕事おわりに引きずられての飲み会だった。


瑞穂が沈没したのと、酔った勢いもあったのか一人がポロリと三池の秘密を口にした。




彼が大阪どころか世界の中でも有名な老舗の繊維会社の創業者一族だと。



「こんなんバレたら今以上に女の子の目の色変わるやろ」


「確かにな〜」


「おぼっちゃまは勝手に恋愛も結婚も許されへんのにな」

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