おかしい。うん、何かがおかしい。
 
 確か私は、うちの兄の経営する会社Valerieを助けるため、佐々木智也さんに差し出された存在だったはず。

 政略結婚だし恋愛感情はないし、そもそも出会ってまだ五日目。
ラブラブのラの字もない間柄なのに、こんなことになっているのはなぜ……?

「じゃあ、俺は先に出るから」
「分かりました。私も時間差で出社します」

 朝食を済ませ、身支度を終えた智也さんを玄関まで送りだす。靴を履き終わり振り向いた彼にビジネスバッグを差し出した。

「いってきます」
「いってらっしゃ……」

 ぐいっと腕を引っ張られて、私の体がぐらつく。
バランスを崩して前のめりになったところで唇を奪われた。