目覚めたら、社長と結婚してました
意外です、名前を呼ぶのがこんなに照れるとは
 重い瞼を開ければ、かすかに頭痛がして顔をしかめた。そして時計に目をやる。まだ辺りは薄暗いけれど、もう七時前らしい。冬だからしょうがないか。

 私は大きく息を吐く。たくさん夢を見た気がするけれどなにも覚えていない。ただ、情報と記憶の大波が頭の中で寄せては返してを繰り返していた気がする。

 一応、今日の午後に先生からの診察があって、なにもなければ明日の朝には退院できる。

 社長は、何時に来るかな?

 そこで無意識に伯母よりも先に社長のことが浮かんだことに戸惑う。おかしい。今の私にとって社長は夫というより、ほぼ初対面の自社の社長という認識でしかないのに。

 慣れ親しんでいる伯母よりも先に気にするなんて。

 昨日の夜に彼と病室で過ごす時間は穏やかで心地よかったからかな。ドキドキさせられてりもしたけれど、嫌なことはなにひとつなかったし。

 むしろもっと一緒にいたかったような……。

 思考を中断させ、頬に手を当てる。とにかく早く思い出さないと。社長だって困っているに違いない。

 十時過ぎに伯母が来て、適度な話し相手になってくれた。最近できた新しいお店の話題や、芸能人のゴシップネタなど。

 自分が暴いたとでもいうような言い方につい笑ってしまう。そして話が盛り上がったところで、部屋のドアがノックされた。

 回診だろうか、と思っていると扉のところで伯母が誰かと話しているのが聞こえる。ややあって入ってきたのは、スーツ姿の男性と八十代くらいの女性だ。
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