目覚めたら、社長と結婚してました

【2nd piece of memory】

 彼は約束は守る人だった。半信半疑で翌週の金曜日に再びリープリングスに訪れると、彼は宣言通り本を貸してくれた。

 まとめて渡されるのかと思えば、意外にも一冊だけ。一冊が分厚いのもあり荷物を増やしたくないのか、はたまた私の読むペースを考慮したからなのかは謎だ。

 けれど私も特に不服を唱えなかった。だからそれが当たり前になった。

 続きが気になるのもあり、毎週金曜日にはバーに足繁く通う。彼も遅くなることもあったが、基本的には顔を出してくれた。

 彼がいつも注文するのはスコッチ・ウイスキーで、琥珀色の液体が注がれたグラスにマイペースに口づけながら、いつも端の席で本を広げている。

 ときどき気まぐれのように煙草を吸うのだと知ったのはつい最近の話。

 対する私は、近藤さんにいつもお任せでカクテルを頼んだ。アルコールを飲むのはいつもその一杯だけ。彼と少し間を空けて座り、早速パラパラと借りた本に目を通す。

 社長ってもっと忙しい存在だと思っていた。

 彼曰く『残業してあくせくと働くことが業績上昇に繋がるとも思えないし、上の人間がそういう働き方をしていたら下の人間も倣わないとってなるだろ。そういう悪循環はいらないし、結果は出している』とのこと。

 たしかに、うちの会社はシフト制ではあるものの基本的に残業はほとんどない。部署によっては裁量労働制も実施しているし、働き方に関しては意外と自由で、福利厚生面などもばっちりだ。
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