Some Day ~夢に向かって~
縮まらない距離、過ぎて行く時間
最悪だ。何だって、あんな時に雨なんか降るんだ・・・。


今更だけど、俺は水木が好きだ。会うたびに彼女に惹かれて行く自分の気持ちをどうしようもできない日々が続いていた。


だけど、その思いを彼女に伝えることは許されるのか、葛藤する俺。なんで俺達は受験生なんだろう、なんでもっと早く出会えなかったんだろう。


考えても仕方ないことを考えてるうちに、時間だけが過ぎて行く。そしてある誤解から俺達は完全に気まずくなってしまった。悪いことに直後に滅多に出したこともない高熱でダウン。寝込みながら、このまま水木と話せなくなってしまったらどうしよう、と俺は焦った。


そして俺は決心した。前に進もう、水木には迷惑をかけてしまうかもしれないけど、このままじゃ全てが中途半端になってしまう。文化祭の力も借りて、俺は水木に自分の想いをぶつけよう。


後夜祭を一緒に過ごそう。はっきり言って、相当勇気がいったけど、俺は水木にそう告げた。固唾を呑んで返事を待った俺に、水木はYesと言ってくれた。文化祭前日の夜のことだった。


俺にとって、実質初めてと言ってもいい文化祭は楽しかった。クラスの連中との距離も縮めることが出来た。後は最高の思い出をそこにプラスする、俺は、何度も繰り返したシュミレーションを胸に、水木を待った。


なのに、雨をそのシュミレーションの要素に入れなかったのは、俺の戦略不足だった。いや、あまりにも神様が意地悪過ぎるんだよ!せめて、あと10分早く降ってくれれば、対処のしようがあったし、10分待ってくれれば、ミッションは遂行できたんだ・・・。


文字通りの水入り、校舎に逃げ帰った俺達は、後片付けを終わらせると、そそくさと帰路につくしかなかった。水木を呼び止めて、仕切り直しというパワーはこの日の俺には、もう残っていなかった・・・。
< 56 / 178 >

この作品をシェア

pagetop