幼馴染みと、恋とか愛とか
だからこそ話せない……
おでん作りを頼まれた三日後、タッパーに多量のおでんを詰めて出勤した。

前の晩、早目に帰宅し、夕食ついでに沢山作ったのを分けて持ってきたんだ。

……でも、紫苑は急な誘いで昼食は外で食べることになった。

もしもそのまま帰らず、私が既に退勤してしまった時間帯に戻って来るとなると、このおでんは温めて食べるようにメモを残しておかないといけないけど。


(なるべく早く帰ってよ、紫苑)


会食に出ようとする紫苑に、テレパシーを送るつもりで眺めてた。


「何だ?そんなに睨むなよ」


自分だけがいい食事をしてくるからって、と言われ、思わずガクッと気が抜ける。


「誰も別に睨んでいませんから」


勝手にいい物を食べてお腹でも壊してくれば?と言いたくなり、隣に首藤さんがいるのを思い出して、ぐっと口籠る。

変にタメ口を聞いたりしたら何と思われることか。
たかが弁当作りでも絡まれたのに、親しそうなところなんて見せる訳にもいかない。


「それならいいけど」


紫苑は家来を従える王様のように、私に笑いかけて部屋を出る。
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