幼馴染みと、恋とか愛とか
救世主のように思えと言われても……
「お兄ちゃんだよ〜」


明るい声が聞こえ、くりっとした茶色の瞳が私のことを覗き込む。

こっちが驚いて「あー」と声を上げると、瞳は急に細くなり、「萌音ちゃん」と呼んで笑いかけた。

伸ばされてくる腕にしっかりと抱えられ、嬉しそうに自分の頬を私の頬に擦り寄せる。

「可愛い」と何度も言って微笑み、ぎゅーっと強く抱き締められたのを覚えてる___。



ふ…と瞼を開けながら、(今のは…)と思い出す。
ぼうっと眺める部屋の中には、既に明るい日差しが差し込んでて、もう朝が来てるんだ…と分かった。


ゆっくりと上半身を起こしながら、眼前に垂れ下がってくる前髪を搔き上げた。
そのまま首の辺りで手を止め、ぼんやりと虚ろな感じで掛け布団カバーを見つめる。



(昨夜は…飲み過ぎた…?)


脱力するように腕を下ろし、息を吐き出ながら肩を落とす。
店を出た時は直ぐにアルコールが飛んだ様な気分がしてたけど、この気怠さを思う限り、やっぱり軽く二日酔いな感じだ。


(水でも飲んでまた寝よ)


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