彼の隣で乾杯を
早希は私の大切な友達。
正義感が強く姉御肌、そして、友達想い。

ある時、女子トイレで私の陰口を聞いた早希が真っ赤になって激昂して相手の女子社員に激しく反論したということがあった。

「由衣子は全力でひとの何倍も努力してる。そんな下品な真似をしなくても契約をとってくる。あなたたち最低だわ。同じ女性として恥ずかしくないのっ」

それでもなお女子社員達は私のことを男に媚を売る女だと言ったらしい。

「由衣子は内面も外見も綺麗だから男性が集まってくるの。おまけに人の何倍も勉強して努力してるんだから当たり前のことよ。あなた達、悔しかったらこんなとこで髪の毛いじくりまわして厚化粧しながら陰口叩いてないで真面目に仕事したらどーなのっ」

「何なのよあなた、冗談じゃないわ。私たちが見た目も中身も佐本さんに負けてるって言うの」

「当然です」

はっきりと言い切った早希に女子社員達の目がつり上がり、一触即発状態となったところでたまたま居合わせたベテラン女子社員の井口さんが止めに入ったのだという。

「谷口早希さんってあのタヌキ部長の飼育係って言われてる人でしょ。地味で目立たない人だと思ってたけど、けっこう熱い人なのねぇ」井口さんはそう言って教えてくれた。
早希は私のことを侮辱され自分のことのように怒りを感じ反論してくれていた。
本当に嬉しかった。

私たちは親友だけど、べったり依存しあうような関係じゃない。
お互い仕事が忙しいし、早希には半年ほど前には結婚するんじゃないかと思っていた長い付き合いの彼氏がいたからプライベートもたくさん会っていたわけじゃない。

お互い時間が合えば飲みに行ったり、買い物に行ったり。
本当に大切な友達。
でも、自社の副社長と知り合いだとは全く聞いておらず、その上早希は行く先も言わず私の目の前からいなくなってしまった。


親友だからと言って何でも言えるわけではないだろうけど、そのことに大きなショックを受けている自分がいた。

でも、
私にも早希に言ってないことが一つあったのだから、彼女と同じなのかもしれない。
親友にも秘密があっても当たり前なんだと思い直した。



私が早希に言えなかったこと

ーーーそれは私が私たちの同期で共通の友達である『高橋良樹』に恋していることだ。





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