彼の隣で乾杯を
私には同じ会社に親友がいる。
彼女の名は谷口早希。

自慢じゃないけど、私に友達と呼べる存在は少ない。
恋人のいない私にとって早希は貴重な心を許せる存在だ。


それなのに
早希は訳アリっぽいオトコと何か揉めたらしく、今日いきなり会社を辞めて夜逃げ同然にいなくなってしまった。
影も形もなく。

もちろん、彼女が逃げ出してしまったことには理由があるだろうし、キチンと理由を聞いてみればそれは仕方がないことなのかもしれない。

だけど。

だけど、聞いてない!
私に黙って逃げ出すなんて。

早希が親友の私に相談もなくいなくなってしまったことが信じられない。




・・・早希のオトコらしきモノは早希が逃げたと知るや否や私のいるオフィスに押しかけてきて騒ぎ出した。

ヤツがそういう行動に出るかもしれないと予想していたからこそ早希は親友の私にも連絡先を教えずにいなくなったんだと思う。
もちろん居場所を知っていても教えないけど、知らないものは教えようがない。

早希は居場所を知っていて隠すのは私の負担になると判断したんだろう。私に黙って消えていた。実に早希らしいやり方だ。
でも、親友の失踪をヤツから聞かされた時の衝撃は忘れられない。

なんてことをしてくれたんだ、この大バカ野郎のクソオトコ。
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