彼の隣で乾杯を


パーティーから解放された帰り道。
時間がまだ早いこともあって、タクシーをマンションからワンブロック手前で降りてのんびりと歩くことにした。

ただ少しだけ歩きたくなった。
今夜は三日月で星が見える。

ああ、星空を見上げてのんびり歩くなんて久しぶり。
最近は深夜タクシーで帰宅しているから歩くことも星空を見上げる余裕も何もない。

今日はホントに疲れた。
お騒がせなエディーのプロポーズに株価の心配。

あれからエディーとニコラスを伴って会場内で火消しに回るのが大変だった。
会場内にいた自分の会社の社長も秘書の林さんも苦笑していたのだけど、こちらは冷や汗ものだ。

ニコラスの人望のお陰であれは冗談で余興みたいなものだとあの場で話を聞いていた人たちに何とかわかってもらうことができたと思う。・・・たぶんだけど。

「余興」と言った時にエディーが反論しようとしたから私は思い切りヒールで彼の高級な革靴を踏んづけてやった。

あれから高橋にもなかなか会えないしちょっと八つ当たりもある。

高橋とは3日前にお昼に社員食堂で顔を合わせたけれど、それも2週間ぶりだった。

ーー寂しいな。



マンションのエントランスが見えた辺りでバッグの中のスマホが鳴っていることに気が付いた。

知らない番号
これは携帯じゃなくて固定電話?

ハッとしてスマホをタップして大声を出した。
「もしもし!」

「・・・由衣子ごめん」

やっぱり早希。
いなくなって6週間、やっと連絡が来た。
本当にやっと。

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