もう一度、愛してくれないか

「お…おかえりなさい。今日は、早かったのね」

妻はカウチソファの前のローテーブルにスマホを置いて言った。

「ごはん、まだでしょ?支度するから、先にお風呂に入ってきて。金曜はてっきり接待で遅くなると思ったから、わたしもう先に入っちゃったの」

彼女は昨日とは違う、セパレートになったルームウェアを着ていた。

「あ…あぁ」

ため息を一つ吐いて、おれはモスグリーンのダレスバッグをダイニングチェアに置いた。
このココマイスターのブライドル スマートダレスは、妻が選んでくれたものだ。

ネクタイをぐいっと緩める。
急に首に圧迫感を感じて、苦しくなったのだ。
少し、険しい顔になってるだろう。

いや、少しじゃない。

……かなり、だ。

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