騎士団長のお気に召すまま
青藍の許嫁
子爵家令嬢アメリア・ミルフォードは悩んでいた。


「どうしたらいいものかしら…」


いくら考えても良い案は思い浮かばない。

アメリアが頭を抱えるというのも、つい先ほど当主であるアメリアの父親からミルフォード家が抱える莫大な借金について聞かされたばかりなのだ。

その金額はとても今のミルフォード家が支払えるものではなく、一家は路頭に迷う寸前のところまで来ている。もう一刻の猶予もない。

ミルフォード子爵家は権力も領地もほとんど持たない下級貴族であるとはいえ、それでも古くから続く家。父であるミルフォード子爵は自分の代で没落させてはならないと模索していたようだが、うまくはいかずにこのようなところまで来てしまったらしい。

当然アメリアも没落貴族となるのは嫌だと思った。だからこそ何か良い案を出さねばなるまいと考えているのだが、どうにも良い案は出てこない。

はあ、と溜息を吐いたとき、そばにいた執事のロイドが言った。


「お見合いをなされてはいかがです?」


ロイドの言うことはもっともだった。

お互いの家の利益を考えての政略結婚は貴族の社会ではよくあること。

ミルフォード家もアメリアと他の貴族の子息と婚姻関係を結べば、今の状況はずっと良くなるだろう。


だが事はそう簡単には運ばない。


「ロイド、よく考えてみて。誰が大量借金を抱えて没落寸前の最下級貴族の娘と結婚しようと思うの?」


他の家にとって、今ミルフォード家と結婚することによる利益は何もない。むしろ損失の方がずっと大きい。

つまりは誰ともこの家とかかわりを持ちたくないということだ。

あまり政治には詳しくないアメリアだが、これくらいのことはすぐにでも理解できた。
< 1 / 148 >

この作品をシェア

pagetop