臆病でごめんね
理想
今日も私にとっての灰色の1日が始まる。


「外田さんてホント、とても22歳には見えませんよねー」

「え」

朝のオフィスビル。
化粧室の洗面台の前で作業していた私は、隣に並ぶ女性社員にそう声をかけられた。


「最初に聞いた時は驚きましたもーん。『え?私と同い年なの?』って。服装の問題だけじゃないですよね」


と同時に、彼女の更に右隣にいる女性がクスッと笑う。


「い、いえ。そんな…」

言葉を発したものの、私は途中で俯いてしまった。

『まただ…』

いつもこんな風に外見をからかわれてしまう。

しかもその二人は別部署に所属しており、本来なら挨拶程度で終わる関係性の筈なのに、社内で私の姿を見かけるとわざわざ接近して話しかけてきて、なんやかんやと情報を引き出し、最終的にチクリと嫌みや皮肉を言うのだ。

『それだけ私が妙に目立ってしまっているということなのかもしれないけれど…』

今に始まったことではなく、私は学生時代からずっと「とてもその年齢には見えないよね」と言われ続けて来た。

常に平均身長より低く、現在は152センチ。
何のアレンジもしていない黒髪のショートボブで、しかもメイクもしていないから、下手したら中学生くらいに見えてしまうのかもしれない。

『ホント、嫌になってしまう』


「そんな余計な話をしている暇なんてないでしょ」

するとその時、個室のドアが開く音と共に、とても不機嫌そうな声が背後から響いて来た。
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